自然の色彩と造形から植物の力を感じる
「個展の会場で会ったある女性が『植物がこんなにきれいだとは思わなかった。帰りに葉っぱを拾って帰ろう』と言う。また、認知症の母親を連れてきたという女性からは『作品を見た母親が突然にその場で踊り出した』と聞きました。そういう不思議な話をいろいろ聞くと、植物が秘めた力を感じずにはいられません」
太陽の光をバックに紅葉を透かして見たときのことを思い出してほしい。順光の下では暗く見える葉の色が、明るく鮮やかなグラデーションを描いて見え、一枚一枚の輪郭や葉脈がはっきりと浮かぶあの光景だ。造形作家・川村忠晴氏が制作する植物の灯りは、それを上品に再現し、暗がりの中に葉や実の持つ生命感を美しく浮かび上がらせる。
「そもそも自然界のものそのものの、色や造形のセンスがいい。虫が食った痕などもとてもかっこいいんですよ。一度、自分で焼きゴテで作ろうとしたこともありましたが、とてもかないませんでした(笑)。落ち葉を拾ってきたらできるだけ手を加えず、そのままを見せるように心掛けています」
植物の灯りが生まれたのは、環境NGOのイベント用に美術制作を手伝っていたとき。川村氏はペットボトルなどの無機的な素材が好きになれず、試しに瓢箪の中に灯りを入れたところ、赤く光る温もりのある不思議なオブジェになった。その面白さに気づき、落ち葉やホオズキなどの素材と遊びながらデザインのバリエーションを増やしていったという。
「僕の作品を見て、自然はなんてきれいなんだ、と感じて帰っていく。そのとき自然と触れ合ってもらえていると思うんです。自然保護は大切ですが、何も採るな、何も触るなとエスカレートすると、かえって自然との距離が開いてしまいます。一昔前なら、笹舟を作ったり、女の子がツメクサで冠を作ったりするのが普通でした。今は人が自然と遊ばなくなったから、環境がおかしくなったのではないかとさえ思います」
川村氏は大学卒業後にテレビドラマの制作に携わっていたが、秒刻みの生活に耐えられなくなり、信州高遠に移住した。土いじりをしたり薪を割ったり、不便だが楽しい生活の中で彼が知った自然との付き合い方を伝えたいという。現在は大人向けのワークショップを構想中だ。
「自然と遊んで、そこから作品が生まれて、なおかつ道具になる。こんな楽しいことはない。今風にお洒落で都会的な遊びを考えて、提案できるようにしたいです」