環境監査研究会代表幹事・NPO法人社会的責任投資フォーラム代表理事
後藤 敏彦
後藤 敏彦
「多くのステークホルダーの皆様にささえられています」という認識が冒頭に示されています。今、世界的に、地球環境・生態系の恵みの中で生かされているという認識が急速に高まってきています。すでに理念や取り組みではとりあげられていますが、これをステークホルダーとして明確に掲げることも今後の見直しでの重要なポイントと考えます。2050年に全世界で温暖化ガス半減云々というハイリゲンダムG8での合意はこのままの延長線(BAU, Business as usual)上では生物絶滅の可能性が認識されたからと考えます。また、日本は90%削減しなければ世界の理解は得られないことも意味していますし、これから10~20年間の取り組みが極めて重要といわれます。連結中期計画を着実に遂行しつつも、石油という 貴重な資源を燃やすのではなくいかに人類に役立たさせていくか大きな方向転換の検討と、今までとは段違いの抜本的なイノベーション戦略策定、に早急に取り組むべき「今がとき」と考えます。
外部への内部告発ではなくヘルプラインが機能したことは愛社精神が生きていることの証で救いです。但し、調査委員会が充分に機能しなかったことの真の原因は何か、について上層部は徹底的に究明、反省する必要があると感じました。コンプライアンスは必須事項ですが、その強化は間違えると職場を暗くしかねません。また、2006年版にも書きましたが、「法律やルールを厳守しているのだから安全だ」という錯覚、すなわちmorale(士気) hazardの増大を招きかねません。ルールや企業倫理は「厳守すべき」ではなく、その実践は組織、人間としての誇りの源泉という位置付けが必要と思います。まさに「ココロも満タンに」です。「現場に足を運び、五感で確認していきたい」という安全環境室長の言葉はすばらしいと思いました。
内部統制システムについてのさまざまな取り組みがされています。船頭は多くても現場はひとつですので、重複を避けるためにはPDCAサイクルによるマネジメントシステムの構築が肝要です。環境でのEMSの経験をうまく活用されると良いと思います。
環境についての取り組みは着実に根づいていることがわかりますが、次世代エネルギーについては抜本的な方針と取り組みを期待したい。
「社員とのかかわり」についてはさまざまな仕組みが用意されていますが、これらが社員満足度(ES)につながっているかどうかがポイントです。企業品質や顧客満足度を高めるためにはESが高いことは必須要件です。ES測定と向上推進策があるのであればその開示、無ければ策定への着手が必要と考えます。
「国際社会とのかかわり」での貢献はすばらしいとおもいますが、ビジネス展開に生かすことができればもっと良いと感じました。
エコカード基金による活動は充実、進化してきていることが読み取れます。しかし、SSを含めたグループ全体のダイナミックな活動や、現場の社員の顔、声があまり見えません。また、安全操業のために地域社会との良好な関係は必須要件ですが、部分的な情報は散見されるもののステークホルダーとして掲げていながら集中した記述がありません。このあたりは報告書として改善の余地があると思います。
以前コメントさせていただきましたウェブの活用については前年から大幅に進められており、たいへん結構ですがURLの字はもっと大きくしたほうが良いと思います。
最後に、さまざまな発行物がありますが、全体像を図示することと情報公開戦略およびそれぞれの位置付け、意味合いを明示されると良いと思われます。

