

環境監査研究会代表幹事・社会的責任投資フォーラム代表理事
後藤 敏彦

製油所での事故発生後、法令違反等が確認されたことは内部の健全な倫理感やガバナンスが存在していることの証拠で救われます。今回の反省として「コンプライアンスの徹底と意識改革」を掲げられています。結論としては、これしかないと思われますし、視点も明確に打ち出されています。とはいえ、どう具体的に実現するかは大きな課題であり、「明るく働きやすい職場」作りと一体化することが大きなポイントであると思われます。
ご認識されていますように、コンプライアンスの徹底は縦のガバナンスになりがちです。また、同時にmorale hazard(注)の増大を招きかねません。「法律やルールを厳守しているのだから安全だ」、という錯覚につながりかねないからです。サステナビリティレポート2005年版で、「石油、IT等、巨大科学技術を真にコントロールできるのは、人知を超えた大いなるものに対する畏敬の念です」と書かせていただきました。意識改革が「畏敬の念」、「謙虚」などの徳目として従業員、組織風土に根づくことが重要で、それが企業の人的資本、組織資本として企業価値を高めることになると考えます。
ガバナンス体制を2005年以来、抜本的に変更、強化されてきております。企業倫理推進、CSR推進、内部統制推進、内部監査はガバナンスを別々の切り口から見ていますが、企業価値という観点では区別できません。新会社法や金融商品取引法対応はコンプライアンスという面では確実に対処する必要がありますが、ダブル・チェックという明確な目的のあるものは別として、重複機能を排除し、なおかつすべてを包含したガバナンス、すなわち経営に洗練されていくであろうことを期待したい。また、ボトムアップによるコミュニケーションがガバナンス報告からは読みとれませんが、可視化されたら良いと思います。
連結中期環境計画は順調のようでたいへん結構ですが、再生可能エネルギー等への取り組みが、今回掲載されなかったのは残念です。技術開発と新エネルギー関係の定量的目標はぜひ挑戦してほしいものです。
社会性の取り組みも頁数は多くないですが充実してきていることが読みとれます。SRIのユニバースに取り上げられているのは素晴らしいことですが、不断のパフォーマンス向上と開示を心掛けないとはずされてしまう危険があることを付言しておきます。
全般的にさまざまな取り組みが抜本的に見直され着手されだしたことが読み取れます。しかし、グローバルなトレンドはステークホルダー・エンゲージメントに向かっています。さまざまなステークホルダーとのエンゲージメントを通して当社への期待を読み取り、それを本業のなかで実現していくことこそ、CSRすなわち企業の社会的信頼性の根本と考えます。そのためにも上述した徳目、組織風土が重要になってくると思われます。
報告書の作り方では、ウェブの併用が随所にみられるのは大きな改善でたいへん結構です。ただし、ウェブの整備に少し時間がかかるようですが極力早めていただきたいと思います。昨年まで付帯されていたデータ編についても、ウェブに移されるのも良いと思いますが、情報量を増やし、より見易いものになることを期待しています。
最後に、数値情報、すなわち可視化に努力されていることがうかがわれます。コンプライアンスの浸透度など計測しているものを含め、さらなる一層の数値化と開示を期待します。
以上
(注)morale hazard(士気ハザード)と、moral hazard(道徳ハザード)は違います。
|