
古来より日本人は“豊葦原に瑞穂の国”と称して水と緑の美しい国を誇りにしてきました。
いつの頃からでしょうか? 生きものや周りの人への思いやりをなくし風土と心を荒廃させていったのは。
私は、15人の仲間と知恵を出し合って『ビオトープ浮島』を考案しました。
この『ビオトープ浮島』、実は、風土と心の再生に向けて“つなげる仕掛け”です。
風土と心の再生に向けての“つなげる仕掛け”
浮島の材料は、水源の森の間伐材、竹、木炭など。
今ではほとんど利用されていませんが、以前は山村の人々の暮らしを支えてきた貴重な森の資源です。
そして、浮かべるのは下流の湖沼。便利で豊かな暮らしの代償に富栄養化と水質汚濁を進めてしまい、水辺の生きものを死に追いやった場所です。
浮島の木炭に住み着く微生物や水生植物が汚濁物質を分解・吸収して水を浄化してくれます。
つまり、稚魚や稚貝、トンボ等が生きていける環境、カイツブリやカルガモが子育てを出来る環境を再生してくれます。
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イベントの主役は子どもたち
浮島づくりは子どもたちを主役に多くの方々の協力で進められます。
私たちは、共同の仲人役をつとめ、関係者の挨拶から浮島の進水式まで、午前中の2~3時間で終了するイベントとして企画・実施します。
作業は、間伐材と竹をロープで縛ること、木炭を入れた植生袋にアシやハナショウブなど水生植物を植えつけることぐらいで、子どもや女性でも簡単に組み立てられます。ただ、重さ約600kg、畳6枚ほどの大きさの浮島を水辺まで運び進水させるのに多少“コツと工夫”いわゆる現場の知恵が必要です。
そこで、地元の方にリーダーをお願いして、子どもや女性たちの作業を見守ってもらいます。
最初に子どもたちに「浮島づくりを手伝ってくれてありがとう」とお礼を言います。それから「今日は時間がたっぷりありますので、急がなくてもいいから自分の仕事を責任持って仕上げてください。そうしないと、そこから浮島が壊れてしまい、みんなでしたことがゼロになってしまいます。」「女子は、手が汚れるかもしれませんが、植生袋に炭を詰めて袋の口を縫い合わせてください。男子は力があるので丸太とロープで筏を組み立ててください」と仕事を頼みます。
子どもたちに大人と同じ作業を頼むのは、単なる自然体験やものづくり体験ではなく“大人と協力して良いことをした”と晴れがましい気持ちになってほしいからです。
1時間ほどで目の前に積み上げられた丸太・竹・木炭・ロープ・植生袋・水生植物などが見る間に浮島に組み立てられます。
活発な女の子は「私も筏を作りたい」とロープを持ってきます。
「きつく締めないとロープが緩むよ」と大人からアドバイスを受けた子どもはかけ声をかけ、体を後ろに反らしてロープを締めようとします。
「もう一本ロープはないかなあ」という声を聞いてロープを探しに走る女の子など、大人に混じり子どもたちが浮島づくりに夢中になってくれます。
クライマックスは進水式。
「そーれ!」と声をかけて、竹のレールとテコを使って浮島を水の中に投げ込みます。
「ウワー!!」という歓声と拍手。子どもたちは水辺に走ります。
「乗れるよ!」と浮島に乗って見せると、しばらく、子どもたちの試乗と記念撮影が続きます。
その間、私たちは「やめて、危ないよ。気をつけて」といつもの習慣で子どもに注意しようとするお母さんや先生方に「大丈夫ですから好きなようにさせてあげてください」と制止役です。
ひとしきりして、浮島を固定位置までボートで曳航していく時も子どもにオールを持たせます。桟橋には次に乗る子どもの列ができます。
お兄ちゃんと一緒に乗りたくて列に割り込む小さい子、そばで気をつけていると、大きい子が列を空けて譲ってあげています。そんな時、大きい子に「偉かったね。ボートに乗ったら、あの小さい子のことを気をつけていてね」と声をかけます。楽しいことをしているときは良い心が出てくるのか、小さい子を一番眺めの良い船首に座らせてあげています。
戻ってきた時、もう一度「ありがとう」と声をかけると、照れくさそうな笑顔で答えてくれます。
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“協働の和”に参加を
水源の森から下流の湖沼までの水環境、人と人、そして三つ目の“つなげる仕掛け”は地域社会と企業。
企業人として成果と効率が求められる会社組織では、とかく、ごく普通の市民感覚が麻痺してしまうものです。
そうしたことが積み重なって信じられないようなことが起きています。
一市民として“地域の協働の和”に参加するとき、必ず、何か気づくものがあるはずです。また、はつらつとした心地よさを味わうはずです。
自立した市民が自ら築く“より良き市民社会”の実現のため、是非とも“協働の和”に加わってくださることを願って止みません。
いつかは帰っていく地域社会のためにも。

山本 裕隆
【Hirotaka Yamamoto】 |
プロフィール
1948年高知県生まれ。子ども時代、高知県の緑豊かな山やきれいな川に囲まれた環境に育つ。学校を卒業して造園設計を仕事とする中で、子どもが遊べる自然環境が壊されているのに直面し、水辺の自然再生に興味をもつ。2002年、森林政策を専門とする宮林茂幸東京農業大学教授とともに、NPO法人「とよあしはら」を設立。現在、事務局長として全国で「とよあしはら浮島プロジェクト」を進めている。埼玉県越谷市在住。
NPO法人 とよあしはら
〒343-0043 埼玉県越谷市上間久里281-17
TEL/FAX:048-976-1170 |
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