| 2003年5月14日Vol.10 |
「どこで働いているの?」「全米公共テレビPBSのニューヨーク局(Thirteen/WNET)」「何しているの?」「ファンドレイズ」「どんな仕事?」「お金持ちを見つけて『ギブ・ミー・マネー』って頼む仕事」
自分の仕事の説明は億劫だ。NPO活動が盛んになった最近でこそ、日本でもファンドレイズへの認識は高まった。それでも「PBS(Public Broadcasting Service)の寄付調達」と言うと、決まって「あの『寄付下さい』ってテレビでやってるやつでしょ?」とくる。「ファンドレイズ=物乞い」というイメージはなかなか根強いのだ。そこで私が使うのが冒頭の答え。大概の人は「へえー」と煙に巻かれて(?)終わりである。
この「ギブ・ミー・マネー」という仕事、つまりファンドレイズは、日本ではまだあまり知られていないが、実は相当奥が深い。寄付の盛んなアメリカでは、税の優遇制度も手伝い、既に専門化された職業である。
|
たとえば私の職場、WNETでは、Development(いわゆる資金調達部、主にannual/unrestricted gift=団体の運営全般に使われる資金を調達)とMarketing(restricted/underwriting gift=主に企業や財団から特定の番組への寄付を調達)の2つの部署のほか、制作部レベルでもファンドレイズ機能を持つ。Development部内ではさらにイベント、調査、プランド・ギフト(信託や遺贈などによる寄付)、キャピタル・キャンペーン、メジャー・ギフト、パトロン・グループ、メンバーシップ、宝くじ、月賦払い、オンライン(ウェブ、電子メール、テレビ放送による寄付)、政府/理事担当、はたまたITやカスタマー・サービスなど、業務がかなり細分化されている。 私はパトロン・グループに所属し、高額寄付者相手に活動しているが、これがまた説明がややこしい。この排他的ソサエティを相手にする時は、「非営利団体=貧乏」の図式は当てはまらない。ロックフェラーなどのオールド・マネーから財界人、芸能人、政治家までを相手に、パーティで社交に勤しむファンドレイザーの姿はまるでニューヨーク社交界作りの裏方だ。「アベニュー」や「タウン&カントリー」など、こうした社交界の模様をカバーする雑誌もあり、元来のチャリティのイメージとはほど遠い、華麗かつダイナミックな方法で米国の個人寄付活動は動いている。 しかし誤解のないように申し上げておくが、もちろんこの仕事、宴にうつつを抜かしているのでは決してない。ファンドレイズという“NPOの営業活動”は、一般のセールスと異なり、直接的な取引代償としての商品を持たないのである。我々が寄付者に保証できるのは「素晴らしい」プログラムと、寄付の「責任ある」取り扱いという、実に主観的な定義に立脚したものだ(客観的データは恐らく年度末に公開される財務資料だけであろう)。この現実の中、寄付する側の主観的な感覚にいかに応えるか。これは“伝道者”としての、寄付者との絶え間ないコミュニケーション活動、信頼を保つための一切のミスも許さない厳しいプロ精神、そして何よりも団体のプログラムが社会のために不可欠であるとの強い信念があってこそ、可能になることであって、そこには「非営利団体だから」という甘えは許されない。並行して、ファンドレイザーにはマーケティング能力は当然必要とされ、現に私が元いたカーネギー・ホールの教育プログラム「LinkUp!」などは、教育ニーズのみならず、ファンドレイズ・マーケティング的にもよく練られ、作られた企画として参考にしていただけると思う。 私個人としては、このファンドレイズという職種が日本で正しく認識され、法的にも環境を整える必要があると思っている。社会に提供するサービスの質を高め、かつ長期的に供給することは、責任ある法人の義務であり、そして営利・非営利を問わず、そうした活動に資金が必要なのは現実。「NPOはあるけど資金のめどはない」ということでは、まるで一昔前の「ホールはあるけど企画がない」という“ハコ優先主義”ならぬ、“法人制度の形骸優先主義”に陥らぬとも限らない。そうするとせっかくの素晴らしいアイディアも、単なる理想で終わってしまうのである。 ということで、私の日本での“ファンドレイズ布教活動”第一弾は、理事として参画したNPO音楽団体グローヴィル。設立して間もない草の根NPOだが、ファンドレイズの概念をきちんと理解し、成果を収めているのは、誠にうれしい限りだ。 |
![]() ![]() ファンドレイズ・イベントの様子
|
|




